青い蛙 5

作:牧師


「この手紙を町の郵便ギルドまで届けてきてもらえるしら?」
村長のミシェルは、昔の知り合いに宛てた手紙を、シャーリーに手渡した。
「郵便ギルドですか?」
郵便ギルドで届けた手紙は、基本的に受け取る人が代金を支払う。
しかも結構、代金が高い為、郵便ギルドを使う人は少ない。
手紙は、目的の町に向かう人に頼んだりするのが普通だ。
「先日、森で見かけた蛙は新種かもしれないの。新種なら魔法学院で
 研究するでしょう。薬や魔法触媒としてね」
魔法や薬の研究には両生類が良いらしく、蛙やイモリの新種は
高価で取引される事も少なくない。
「なるほど、そういう事なら相手も納得ですね」
シャーリーは渡された手紙を大事そうにかばんにしまい込むと、町に届ける事にした。
「シャーリーが戻ってくるのは一週間後かしら?もう少し近いと助かるんですけど」
交通の便の悪いこの村から町まで、おおよそ片道二日前後、町で休む事を考えると
その位はかかると、ミシェルは考えていた。

シャーリーが町に向かって二日ほど経った頃に、それは行動を開始した。
その日は朝から蛙の鳴き声が、うるさい位に近隣の森から響いていた。
半月ほど前に、この地区に地震が起きてから、村人は蛙の数が増えた気がしていた。
「蛙たちがやけにうるさいのう。もう畑に行けと行っておるようじゃ」
まだ夜は明けきってなかったが、老人は畑に行く事にした。
「ゼリコさんおはようございます、相変わらずお早いですね」
近所に住んでいるサリーナも、娘のイリアを連れて畑に向かおうとしていた。
「ほほう、サリーナさんも蛙にたたき起こされたのかの?こう五月蝿くては、
 寝てなどおられんからのぅ」
よく見ると他にも何人も、畑に向かうため家から出てきていた。
「まだ寝ている者も多いことじゃ。せめて静かに畑に行くとするかの」
ゼリコに言われ、他の人達も後に続いて畑に向かう。
その頃、何軒かの家では既に蛙の被害が出始めていた。
ベットの上で眠ったまま、気が付く事無く、サファイヤへと変えられて行った。

「やけに蛙が多いのう?まあ蛙なら作物に被害も無かろうが・・・」
蛙が多いとそれを狙う蛇が出る、以前アマガエルが大量に発生した時に
蛇にかまれる被害が多く出たため、ゼリコはあまり快くは思って居なかった。
「収穫を始めるかの。サリーナさん、籠を持ってきてもらえんか?」
ゼリコがサリーナに声をかけた時、蛙がゼリコの手に飛びつき、舌を吸い付けて来た。
「何じゃ何じゃ?」
吸い付かれた手が濃い青色のサファイヤへと変化して行く。
ゼリコは自分の身に何が起きているのか、理解するまもなく精気を吸い尽くされ
真っ青なサファイヤへとその姿を変えた。
辺りでは他の人達も次々に蛙に襲われて、その体をサファイヤへ変貌させていく、
何人かは逃げようとして作物に足を取られ、転んだ所に蛙が襲い掛かる。
サリーナとイリアも蛙に襲われ、身に着けている物を砂に変えられて、裸にされた後、
体中蛙に吸い付かれ、サファイヤへと変えられて行った。
「イリアは・・・、イリアは助けて!!ああぁあっ」
胎内に入り込んだ蛙が、白い泡に包まれた卵を、サリーナの子宮に産み落として行く。
サリーナの目の前では、愛しい娘がその体をサファイヤへと変化させていた。
「ママ、ママァ!!」
自分の体に何が起きているのか分からないまま、イリアは完全にサファイヤの彫刻に
変わり果ててしまった。
「ああぁ、イリア」
その後を追うように、サリーナも完全にサファイヤの彫像になった。

日が昇り村に朝が来ても何件かの家からは物音一つ無かった。
とある民家では、母親のシアが忙しく朝食の準備をしていた。
娘のユーリがそれを側で楽しそうに見つめていた。
「ねえママ、なにかユーリにおてつだいできることない?」
小さな娘の提案は嬉しかったが、まだ手伝える年齢でない事も、十分承知していた。
「いい子ねユーリは、でもママは大丈夫だから」
優しく微笑みながら娘に話しかける。
その時、何かが天井から二人目指して落ちて来た。
「あ、かえるさんだ。ねえママ、あおいかえるさんだよ」
母親の体に落ちて来た蛙を見て、ユーリは楽しそうにシアに話しかけた。
「ほんとだ、ユーリはあっちで蛙さんと遊んでる?・・・えっ!!」
シアが自分の体に落ちて来た蛙を一匹捕まえて、娘に手渡そうと手の平を広げ驚いた。
蛙を捕まえた右手を開くと、蛙が舌を吸いつけ、手の平の中心から、ゆっくりと、
透き通ったサファイヤへと変わっていたのである。
「て・・・手が透き通っていく。何なのこの蛙?ユーリ!!蛙に触っちゃダメ!!」
娘の身を案じてユーリに呼びかけたシアだが、娘の体に張り付いた蛙は次々に
舌を吸い付かせて、じわじわとユーリの小さな体を、サファイヤへと変えて行く。
「いや、こわいよ、ママ、ユーリどうなっちゃうの?」
おびえたユーリは母親の腰にしがみついた。身に着けている服を二人とも蛙に
完全に砂に変えられ、既に一糸纏わぬ格好になっていた。
「ああぁ、ユーリ。お願い誰か!!娘を、ユーリだけでいいから助けて」
体の大部分をサファイヤへ変えた蛙は、二人の胎内に侵入しようと試みる。
完全に成熟した母親のシアの胎内には難なく侵入を果たしたが、
幼い未成熟なユーリの体に、進入しようとしていた蛙は、何度か試みた後に
とうとう諦め、一匹の蛙がひときわ大きく鳴くと、既にサファイヤと化した
ユーリの体の部分にも再び舌を吸いつけ、見る間に濃い真っ青なサファイヤへと
変えていく。
「ママ。マ・・・マ・・・」
「あああぁあ、ユーリが・・・。私の娘が」
シアの目の前で愛娘のユーリは、真っ青なサファイヤの彫像にその姿を変えた。
その時、シアの胎内で、蛙の産卵が始まろうとしていた。
「な・・・、膣内で・・・、う・・・動き回らないで。ひゃうっ!!冷たい!!」
蛙は次々にシアの子宮に、白い泡に包まれた卵を産み付ける。
「一体何をしてるの?ああぁ、怖い。誰か、誰か助けて!!」
娘ががサファイヤに変えられたショックと、自分の身に起きている未知の恐怖で
シアは取り乱して大声で叫んだ。
「ああぁ、もう体が動かない、声も・・・、この蛙が・・・、か・・・」
シアは最後に見たのは、最初にサファイヤに変えられた自分の右手の掌だった。
二人をサファイヤの彫像に変えた青い蛙達は、満足そうに二人の体の上で、
ケロケロとしばらく鳴き続けた。

「んっ、やっと帰ってこれた」
町に手紙を出しに行っていたシャーリーは、一週間ぶりに村の入り口に
たどり着いていた。
「静かだな・・・、こんな時間なのに、みんな寝てるわけじゃないよね?」
太陽は真上に来ていた、昼は回っているのは間違い無い。
しかし辺りには、子供一人見当たらなかった。
「広場・・・かな?」
シャーリーは村の広場に足を向けた。しかし広場にたどり着いても
誰一人居なかった。
「何だろう?この胸騒ぎ。何かが起きてるような・・・」
不安に駆られたシャーリーの足元には、小さな青い蛙が忍び寄ってきていた。
蛙はシャーリーに気づかれる事なく、その体に這い上がっていった。
「ひゃん。何?」
蛙はシャーリーの靴を砂に変え、素足を剥き出しにすると、
そこに舌を吸い付かせて、足元から徐々にサファイヤに変えていく。
「何?何なの?とにかく逃げなくちゃ!!」
シャーリーは逃げようとしたが走り出そうとした、格好のまま
もう足は動かなかった。
「いや、足が動かない。ああぁ、足が透き通っていく。何?何が起きてるの?」
シャーリーの足をサファイヤに変えた蛙は、体をよじ登る。
何匹かは胸や手にたどり着くと、シャーリーの服を、次々に砂に変えて行った。
「何この蛙!!あっちに行ってよ!!」
シャーリーは蛙を振り払おうと、一生懸命に手を動かしたが、健闘むなしく
その手をサファイヤに変えられてしまう。
「て・・・手が動かない。あ・・・、いや・・・。」
シャーリーの大きな胸に、何匹も蛙が舌を吸い付け、やわらかいその豊かな胸を
硬い透き通ったサファイヤへと変えて行く。
「ひぎゃあぁぁ、い・・・痛い!!」
蛙が産卵する為に、シャーリーの膣内に進入して行く。
処女のシャーリーは、凄まじい激痛に耐えられず悲鳴を上げた。
「痛い。え・・・、痛みが引いて、なんだか、気持ち良くなって来た・・・。」
蛙の背中に、靴や服を砂に変えた時の粘液が残っていたらしく、
それが粘膜に吸収されるたびに、破瓜の痛みは消え、シャーリーは次第に
気持ちのいい快楽に囚われていく。
「何?この感じ?痛くて、気持ちよくて、私・・・」
子宮にたどり着いた蛙が産卵を開始するが、シャーリーは痛みと快楽で
殆ど感覚が残っていなかった。
「いや、違う良い、なんなの?この気持ち」
僅かに動く首を動かすと、シャーリーの長い髪の毛が軽く揺れた。
それに反応して、蛙は首筋に舌を吸い付け、首筋からサファイヤに変えて行く。
「ああぁ。もう何も感じなく・・・」
痛みと快楽で困惑した表情で、シャーリーはサファイヤの彫像へ姿を変えた。

一月後、四人の冒険者が手紙を携え、この村を訪れる。
彼女達はこれから自らの身に降りかかる災厄を知る由もなかった。

おわり


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