暗転する日常

作:牧師


 平穏な初夏の午後、赤茶げた土の覗く舗装のされていない道では野鳩が何かを啄み、
木で出来た電柱に張られた電線では雀がチュンチュンと賑やかに戯れていた。
 穏やかな日常を打ち砕くその異変に、いち早く気がついた幸運な数羽の雀が飛び去った後、
辺りの様子が急激に変化した。

 正確には出現した何かが、薄暗い結界を作り出し、半径数十メートル程の空間を飲み込んだ。
結界との境では陽炎の様な揺らぎが見て取れ、更に結界内には薄紫色の薄い靄がかかっていた。
 何かは地面から赤紫とピンクが入り混じった太い半透明な体の一部をウネウネと覗かせると、
その体から無数に伸びた細い触手から、甘い香りのする白い液体をシュウシュウと噴霧して、
辺りを白い霧で包み込んでいった。

 数秒後、ゴトッゴトッと音を立てて歪な形をした石の塊が無数に地面に落下していた。
白い霧は中心部分は辺りが見通せ無い程だったが、結界の境では薄っすらと掛かってだけだった。
そして数分後に何かは、周囲に動く物が居ない事を確認すると再び地面にズブズブと姿を消した。
獲物を狙う為に結界と霧を残したまま…。


 地面に姿を消した何かの正体は淫獣だった。
淫獣、淫は陰に通じ、陰は闇と同意、此の世ならざる闇より産み落とされ生態は殆どが謎に包まれる。
わかっている事は、人間など精神的に進化した生物を特殊な能力で快楽に誘い精気を奪う事、
吸精した対象を石等に(結果的に)変える能力を持つ事、高い再生能力と催淫能力を持つ事位だった。


 結界の近くにある中学校では午後の授業も終わり、生徒達はクラブ活動や友達との喋りなど、
思い思いに自由な時間を過ごしていた。

 テニス部の一年生、春日野しおりは他の新入部員達と球拾いとローラー掛けやネットの片付けなど、
様々な雑用を済ませていた為に、先輩達より三十分程遅れて着替えを終えて部室を後にした。
 しおりは身長152センチ、垂れがちな大きな瞳、厚めの唇、テニス部に所属しているにも拘らず、
手足には殆ど筋肉が見て取れず、細く美しいままだった。
おろせば長く腰まである黒髪をポニーテールにし、やや痩せ型な体型に対して不釣合いな豊かな胸を、
少しだけコンプレックスにしていた。
大きな胸は他の一年生より先輩に目の仇にされているように雑用をいいつけられている原因でもあった。


「じゃあね〜、また明日」
 軽く手を振って校門の前で友達と別れたしおりは、幼馴染の松岡さとみと並んで歩き始めた。
二人の家まで続く通学路は道幅が狭い事と、県道から外れている為に普段から車は殆ど通る事が無く、
しおりとさとみは辺りの様子を気にする事無く、学校の噂やテレビの話題に夢中になっていた。
「それでね、さとみっ!!今度思い切って天城君に話しかけてみようと思うんだ〜、
何かきっかけでもあればいいんだけどね〜」
 しおりの話す天城士狼は同級生の男子生徒で、成績優秀、スポーツ万能、その上、顔も良く、
同級生だけでなく、上級生や他校の生徒の間でも噂になる程に有名だった。
「しおりったら…、天城君とは同じクラスなんだから幾らでもきっかけなんてあるじゃないの、
体育祭にクラスマッチ、春の文化祭も近いしそれに…」
 さとみはしおりの気付かれない様に、一瞬だけ大きな胸に視線を落とした。
おっとりとした性格のしおりは、一緒に居るだけで癒される存在だが、普通に廊下を歩いただけでも、
周りの視線を釘付けにしてしまう、ぷるんぷるんと大きく揺れる豊かな胸は特に魅力的だった。
中学生としてはさとみも決して小さくはないが、比べられると歴然とした差があった。 
 さとみは一年ほど前までは髪を腰まで伸ばしていたが、しおりと比べられる事に言い得ぬ感情を持ち、
しおりとは対照的になるように、髪を肩まで届かない程度のショートカットにしていた。
 さとみの最大の魅力は外見では無く、形の良い唇から囁かれるガラス出来た鈴の様な美しい声で、
名前を呼ばれただけで、幼馴染のしおりでもたまにドキッとしてしまう程だった。

 いつも通い慣れた、車通りの少ない横道に入ったしおりとさとみは辺りの変化に気がつかなかった。
お喋りに夢中だった事もあり、結界の境の陽炎の様な揺らぎや、まだ薄っすらとではあったが、
注意していれば感じ取れる薄紫色の靄、その他の奇妙な雰囲気に何一つ不思議に思うことが無かった。

『あれ…?苺に練乳をかけたような甘い香、それになんだろう?この感じ…、なんだか体が熱い…』
 しおりは急激に訪れた、今まで感じた事の無い心地良い感覚に戸惑いを隠せなかった。
全身が燃える様に熱く、胸…特に尖って来た乳首がブラに擦れる度に言い得ぬ甘い快感が齎される。
揺れた制服のスカートの裾が太ももを撫でただけで、甘美な刺激がしおりの全身を駆け抜け、
その刺激の為しおりの唇からは、次第に熱い吐息が漏れ始め、足を進める事も困難になっていった。
「はぁはぁ…ねえ…さとみ、なんだか少し気分が悪いみたいなの、少し…休んでもいいかな?」
 しおりが並んで歩いていた筈のさとみに視線を向けると、さとみはしおりの少し後ろで瞳を潤ませ、
服が擦れる度に訪れる甘美な刺激の為、ピンク色の秘所から銀色の蜜をトロトロと滲ませていた。
「うん、いいよ…、私もさっきから急に…なんて言ったら良いのかわからないけど、体が変なの…」
 しおりと違い、さとみは少しはオナニーの経験はあったが、此処までの疼きは初めての事だった。
ほんの数ヶ月前まで、ランドセルを背負っていた二人にとっては無理のない事ではあったが。

 歩みを止めてから僅かな時間で、二人は体の疼きに耐えられずに道に座り込んでいた。
座り込んだ地面には見る間に愛液で出来た水溜りが作りあげられ、それでも際限なく蜜は溢れ続けた。
『やだっ…、私どうなっちゃったんだろ、なんだか気持ちいいけど、お腹が変に熱いし…、
それに…愛液だったかな?どんどん溢れて来て止まらないよ…』
 保健体育で習った程度の知識しかないしおりには、何が起きてるのかは完全に理解できてはいない。
一方さとみは、しおりに背を向けた格好で座り込み、自らを慰めている事がしおりにばれない様に、
喘ぎ声を押し殺しながら、自らの秘所でクチュクチュと音を立て、リズミカルに指を躍らせていた。
『んっ…、凄い!!こんなに感じたの初めて!!ああん!!今の声…しおりに聞えてないよね?』
 しおりもさとみの様子を気にする余裕はない為に、さとみの手淫がばれる事は無かったが、
気付かれるかも知れないという背徳感がよりさとみを興奮させ、次第に指使いは激しさを増した。
 色が濃くなる程に濡れたスカートを捲くり上げ、肌に張り付いたショーツの下に手を潜り込ませて、
膣口を軽く指で撫でていた中指を躊躇う事無く、熱い蜜の滴る膣内へと挿入し想いのままに捏ね回す。
『指が…止まんない!!直ぐ後ろにしおりが居るのに…、気付かれたら絶対に軽蔑されちゃう、
ひゃああん!!で…でも、やめられないよぉ…、ひゃぁぁぁ、ダ…ダメ、声が漏れちゃう』
 白く細い指を膣内でニチュニチュと動かす度に、銀色の蜜がプチュプチュと音を立てて飛沫となり、
フトモモを伝って、足元の愛液で出来た水溜りに雫がポタポタと際限無く落ち続けた。

 既にさとみには今居る場所が、人通りの少ない横道だという事すら思い起こす事が困難だった。
右手の中指と人差し指は、更なる快楽を求めて根元まで膣内に差し込まれ、粘膜と柔肉をかき回し、
左手の人差し指と親指でクリトリスを摘まみ上げ、貪欲に新たな刺激を求め続けていた。
自らの指で散した破瓜のジンジンとした痛みですら、今のさとみには心地良いに変わっていた。
『あ…来る!!何か来ちゃうっ!!ヤダッ…、んっ』
 さとみが今まで家の風呂場やベットでしていた自慰は、いつも軽い絶頂を迎えた所でやめていたが、
今、別の生き物の様な淫靡な指使いで齎されている快楽は、さとみの頭の中を真っ白に染め上げ、
心をドロドロに融かし尽くし、これまでに体験した事の無い絶頂の領域に押し上げようとしていた。
「気持ち良くってもう我慢出来ないよぉっ!!イク…イっちゃう!!ひゃああああん」
 絶頂の快楽が脊髄を稲妻の様に駆け抜け、さとみの脳裏を真っ白に染め上げる。
押し殺そうとしていたが耐えられず、形の良い唇から漏れた艶かしい嬌声が辺りに響いた。

「はぁ…はぁ、あれ?どうしたんだろう?手が重くて、なんだか痺れてるみたいなこの感じ…え?」
 痺れた様な感覚と、指が動かない事を疑問に思い秘所に潜り込ませていた手に視線を向けた。
さとみの手首から先は硬い灰色の石に変化していた為に、当然曲げたり動かす事も出来ない。
石化した手を見て困惑するさとみに再び容赦なく、激しい快感の波が襲い掛かる。
「どうして?手が石に…、ふわぁ、またイっちゃう!!ひゃあああああん」
さとみが激しい絶頂を迎える度に、パキッパキッと音を立てて石化は手首から肘に向かって進行し、
白く細い足にも石化が始まり、足首から脹脛の辺りまで硬く冷たい灰色の石に変わっていった。

さとみの様子を気にしたしおりは、火照った体を捻って視線を向け様としたが、襲い来る疼きの為に、
僅かに体の向きを変える事すら困難だった。
『さとみどうしたんだろう?さっきから変な声を出して…、んっ、体を動かすと乳首が擦れちゃう。
体を後ろに向けられないよ…』

 その時、しおりの前方の地面に影が生まれ、淫獣の赤紫とピンクが入り混じった触手が姿を現した。
無数の触手は粘液を滴らし、次々にしおりの手足に絡みつき、更に触手を衣服の隙間から潜り込ませ、
シャツや下着を次々に引き千切り、しおりを一糸纏わぬ姿に変えて行く。
「き…気持ち悪い、やだっ!!やめてよ…、ひゃうん、い…今の何?ひゃあああん!!」
 直径三センチ程の太さのヌメヌメした触手が、体に絡みつき、衣服を引き裂かれる事に嫌悪したが、
次第に甘い刺激へと変化していった。
淫獣はしおりの豊満な胸に触手で縛り上げる様に巻き付き、強い力で強引に両足を閉じさせると、
ゆっくりと持ち上げて、巨大な本体へと引き寄せていった。
「やだやだっ!!なにこれ?いやあぁぁぁぁっ!!」
 しおりの目の前に現われたのは、巨大なミミズ型淫獣の半透明な赤紫色の本体だった。
巨大な体には繊毛の代わりに無数の細かい触手が蠢き、先端の頭と思われる部分には大きな口があり、
口の周りから生えていた触手がしおりを縛り上げ、その大きな口の中に飲み込もうとしていた。

 さとみが異変に気がつき、石と化した手足を引き摺るように振り返って目にしたのは、
巨大なミミズ型淫獣と、ジュプリジュプリと音を立てて、淫獣に飲み込まれているしおりの姿だった。
「し…しおりっ!!なに?なにがどうなってるの?アレは何なの?んっぶっ!!んんっ」
 しおりを飲み込んでいた淫獣は、触手を使いさとみにも襲い掛かり、小さな口に触手を突っ込み、
更に秘所にも触手が滑り込み、蜜の溢れる陰口に辿り着くと、柔らかい膣内を一気に奥まで貫いた。
『ひゃああん!!凄い、こんなの初めて、あそこだけじゃなくて、口もとっても気持ちいいよっ!!』
 触手の先からは甘い香りのする白い液体が噴出し、ビュクビュクとさとみの上下の口に注ぎ込まれ、
さとみの体は軽く仰け反った格好のまま、次第に灰色の石へと変わって行った。

 淫獣に飲み込まれたしおりは、淫獣の体内でコンニャク程の硬さの肉襞に全身を愛撫されていた。
それはまるで巨大な膣に、人型の陰茎に変えられたしおりが犯されている様な姿だった。
「さ、さとみが石に変わって…、きゃうっ!!え?そんな所に…、きゃあああああ」
 棒状の長い肉襞がしおりの秘所に捻じ込まれ、処女膜を突き破り、ウネウネと狭い膣内を蹂躙した、
破瓜の傷は淫獣の肉襞から分泌される体液により即座に塞がれ、しおりには快楽のみが齎される。
肉襞は子宮にまで進入し、催淫効果のある液体を撒き散らしながらウネウネと膣内を捏ね回し続けた、
「何?何が起きてるの?何かがお腹で動いて…この感じいったい何なの?あああああん!!」
 淫獣に飲み込まれたという事、幼馴染のさとみが目の前でゆっくりと石像に変わって行く事と、
何の知識の無いままに与えられた絶頂へと誘う程の快楽で、しおりは完全に混乱していた。
辛うじて理性が残っている事自体が奇跡ではあったが、その為に快楽に誘う淫獣の責めは熾烈を極め、
全身に催淫効果のある液体を浴びせられ、それを絡めあげて無数の肉襞が小さな舌の様に蠢く、
固くなった乳首を肉襞が擦り上げ、豊かな胸や、脇の下、ヘソや指の間まで隙間無く撫で回される。 

 自らの体に何が起きているのか理解できないまま、徐々にしおりの体にも石化が始まり、
絶頂に達す度にミミズ型の淫獣に精気を奪われ、細い指や美しい黒髪を灰色の石に変えていった。
石の針と化した髪の毛がしおりの体を引っ掻き、無数の赤い筋状の傷をつけ血を滲ませたが、
淫獣の肉襞が体液を塗り付け、傷付いた端から跡を残す事無く完治させていった。
「あ…手が痺れて、全然動かない、ひゃあああん、もう許して、やぁあっ、また何か来ちゃうっ!!」
 肉襞がグネグネと捻りながら恥骨を叩き、ジュブジュブと激しく音をたてて狭い膣内をかき回す、
しおりを更なる快楽の世界に引き摺り込んで精気を吸い上げる為に、淫獣の執拗な責めは続いた。
 既に石化した手足や灰色の広がる腹部や、硬い石の塊に変わり果てた胸にも肉襞は絡み続ける、
石に変わり神経は通じていない筈の部位も、淫獣が体内で撒き散らす催淫効果のある液体の効果で、
敏感になった陰核の様に感じ、一撫でされただけでも快感が全身を駆け抜け、瞬時に絶頂に押し上げられ、
絶頂に達した瞬間に発散する精気を淫獣に吸い上げられて、残された生身の部分も石に変わっていった。

『ふわぁぁっ、とぉっ…ても…きぃもち…いいよぉ…』
 M字開脚状態で足を触手に縛り上げられ、陰口に太い触手を突っ込まれ、拡げられたまま石化し、
両手も触手に縛り上げられたさとみは、喉と顔半分程を残してその殆どが灰色の石と化していた。
 既に理性は欠片程も残っておらず、灰色の石と化した体から齎される快楽に精神を犯され続けた。
焦点を失った瞳に、ミミズ型淫獣の体内で自分と同じ様に冷たい石像に変わろうとしているしおりの姿が、
薄っすらと映されたが、幼馴染のしおりの事を思い出す事無くさとみの体は完全に石へと化していった。

 さとみの体が完全に石に変わった後も、残った精気を吸い尽くす為に触手の責めは続けられていた、
はだけた制服から覗く灰色の胸を赤紫色の触手が包み込み、催淫効果のある液体をべったり塗り付け、
ピチョピチョと音を立て硬い石の膨らみに触手を擦り付け、永遠に閉ざされる事の無くなった口に、
石の管になった喉の奥に甘い香りのする白い液体を噴霧し、流し込む様に触手をジュブジュブと収縮させ、
残った精気を一滴残らず絞りつくして、ようやく淫獣はさとみを永遠に感じられた陵辱から解放した。

 淫獣の体内では、完全に石化したさとみと同じ様に陵辱の限りを尽くされ精気の枯れ果てたしおりが、
ヌルヌルした粘液に包まれ、体外に排出されようとしていた。
淫獣の半透明の体をゆっくりと進み、やがて淫獣の肛門と思われる部位から地面に解放たれた。
石に変わり果てたしおりの周りには、しおり達より三十分ほど前に学校を後にした先輩数人が、
さとみと同じ様に淫靡な表情で物言わぬ石像に変えられ、地面に横たわっていた。

 やがて淫獣は満足したのか、地面に消え去ると結界を解き、再びこの町に現われる事は無かった。
石化したしおり達はその日のうちに発見されたが、元に戻す方法も石化した原因も解明される事無く、
街外れの寂れた神社にひっそりといつまでも安置され続けた。


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