悪夢の贈り物 後編

作:牧師


 異世界から来訪した、黄色いウミウシの形の魔獣。
校舎のマドに張り付いた生徒や教師達も、その魔獣によって繰り広げられる凄惨な淫劇を目撃していた。
「な……なにがおきてるの?」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「逃げないと……。もう!!そこどいてよっ!!」
 杏奈と明美の二人が石像に変えられた瞬間、その光景を見ていた生徒達は忽ちのうちにパニックを起こした。
逃げ惑う生徒は前に居る生徒を突き飛ばし、四散した椅子や机に足を取られ、狭い教室で次々と将棋倒しになっていた。
「落ち着きなさい!!乙矢さん、貴女学級委員長よね?貴女が皆を講堂に避難させなさい。私は今から学院長に連絡に行きます」
 三階の三年三組で授業を行っていた数学教師の織笠美紗緒は、学級委員の乙矢恵に的確な指示を出し、自らは急いで四階にある学院長室に向った。
冷静で的確な行動を取った美紗緒とは対照的に、一階の一年四組で授業を行っていた新米教師の村上比奈子は、生徒に窓と入り口のドアに鍵をかけさせ、
魔獣が居るグラウンド側とは反対側の壁に生徒を集め、逃げる事も他の教師に連絡をする事もせずにただ震えていた。

 最初に杏奈と明美の二人が石像を変えた後、魔獣は僅か二十分足らずで、グラウンドに居る全ての生徒を、石で出来た魂を持つオブジェへと変えた。
グラウンドに居た生徒を全て石像に変えた魔獣は、まだ無数の生徒が残る校舎へとゆっくりと進み始めた。
「に………逃げないと!!あああっ!!」
 一人で抜け出し、講堂に向わずに校外に出ようとした麻賀洋子は、グラウンドに出た瞬間魔獣に見つかり、
頭部から伸びた二本の目から放たれた白い光を浴び、乾いた音を立てながら灰色の石像に変わり、校庭に並ぶ石のオブジェに加わった。
息を殺して校舎から抜け出した他の少女達も、誰一人逃げ出す事は出来ず、洋子と同じ運命を辿り、その体を石に変えられて校庭で立ち尽くしていた。

「いやぁぁぁぁっ!!こっちに…来ないで!!」
 魔獣は、まず、校舎の一階に居た生徒に狙いを定め、一年三組と四組の教室目掛けて胴体にある赤い巨大な目から赤い光を放ち、その光で少女達を包み込んだ。
「あ…あああっ!!」
「か…からだが……あつっぅぅぅいっ!!」
「そんあぁぁっ……。どうして…急に…、やだっ……ぬれちゃ……うっ……」
 多少の個人差はあったが、赤い光が齎す催淫効果に少女達はその身を火照らせ、トロトロと秘穴から熱い蜜を滴らせ始めた。
一年四組の学級委員の椎名智恵は、黒目がちな瞳に涙を浮かべ、小さく身体を震えさせながら押し寄せる快楽に耐えていた。
その智恵の目の前で文芸部の渡部胡桃は、口から熱い吐息を漏らし、人目を憚らず机の角に秘所を擦り付けて自らを慰め、齎される甘い快楽を思う存分に貪っていた。
「いぃんちょぉぉぉ。がまんなんて……からだにどくだよぉぉぉ。こぉぉんなに、きもち…いいんだよぉぉっ。いっしょにたのしもうよぉぉ」
 既に淫欲に飲み込まれていた新城舞香は後ろから智恵に抱き付き、舞香は智恵の耳朶を優しく噛んで首筋に口付けた。
舞香は右手でゆっくりと智恵の制服のボタンを外して桜色の染まった大福の様な柔らかい胸を露にさせ、ふくよかな胸をゆっくりと揉みまわし、硬くなった乳首を摘んで引っ張った。
 舞香と智恵のすぐ横では、新米教師の比奈子が数人の生徒に囲まれて、全身に舌を這わされ、大きな飴玉のようにペロペロと嘗め回されていた。
「そんな所なめちゃ……だめ……ひゃああぁぁぁん。やめてぇぇっ。イクッ。いっちゃうっぅぅぅぅぅぅっ!!」
 比奈子は何人もの生徒に秘所や胸を執拗に舐められて絶頂に達し、パキッパキッという乾いた音だけを残して灰色の石像へとその姿を変えた。
比奈子を絶頂に導いた生徒はそのままいつまでも石に変わった比奈子の身体を舐め続け、その姿のままで絶頂に達し、一塊の淫靡な石のオブジェとなった。
 舞香や胡桃も津波のように押し寄せる甘美な刺激に耐える事が出来ずに絶頂に達し、やがて教室の中には、彼女達が垂れ流した愛液の香りと、無数の石像だけが残された。

 一階に居た生徒を淫獄に堕とした魔獣は、次に二階で授業を受けていた二年生と、三階で避難せずに教室に閉じこもっていた三年生に狙いを定めた。
しかし、二階より上は、角度的に赤い光が届かない為、魔獣は襞から覗く不気味な管を伸ばし、僅かに開いていた窓から教室内にその管を送り込んだ。
「なに?あれ?あ……何か出て………、やぁっ、これ、動いて………、いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「イタイッ!!やあぁぁだぁぁぁぁっ。入ってこないでぇぇぇぇぇっ!!」
 教室に侵入した管からは、プルプルとしたゼリーの様な物体が溢れ出し、そのゼリーは意思を持って少女達の胎内に次々と侵入した。
ゼリーの様な物は膣穴から侵入し、更にその奥の子宮内をその柔らかい身体で埋め尽くし、少女達のお腹をまるで妊婦のように、大きくぽっこりと膨らませた。
「あ……れ…?気持ちよく……。ひやぁぁあああぁぁぁぁっ!!」
「だぁめぇぇっ!!こんなの…たえられなぃぃぃぃぃっ!!」
 ゼリーの表面は触れた場所を性感帯に変えるヌメヌメとした液体で覆われており、その液体に触れた少女達は指先や唇を性感帯に変えられ、
僅かに指が何かに触れたり、普通に呼吸をするだけで、脳裏を真っ白に塗り潰し脳髄を痺れさせる程の快楽が齎され、その快楽に耐えられない少女は次々に絶頂に達し、身体を石へ変えた。
 彼女達の声が途切れた後の教室では、妊婦の様にお腹を膨らませ、膣穴を大きく開いた淫靡な石像が無数に存在していた。
身体を石に変えられた少女達は死んだ訳では無く、石になってなお敏感な体の中で、僅かに埃が身体に触れただけで、魂が蕩ける程の快楽を味わい続けていた。

 講堂に避難していた三年三組の生徒や、家庭科室、理科室、音楽室で授業を受けていた少女達もゼリーの様な物に襲われ、淫靡な姿の石像に変わっていた。
三年三組の学級委員の乙矢恵は小柄な体に似合わない程の大きな胸を持っていたが、その胸以上にお腹をぽっこりと大きく膨らまし、
綺麗な花弁に隠された誰の侵入も許していなかった膣穴を、子宮の奥まで覗ける程に大きく開いた淫靡な姿で石像に変えられていた。
 他の少女達も皆一様に同じ姿で石像に変わっており、齎された快楽でトロトロに蕩けさせた妖艶な顔をしていた。

 三階の三年三組で授業を行っていた数学教師の織笠美紗緒は、他の教師より早く四階にある学院長室に辿り着いた。
委員長の乙矢恵に生徒の誘導を任せた事もあったが、いち早く魔獣の危険性に気が付いていた事も大きかった。
「学院長緊急事態です!!」
 最初に杏奈と明美の二人が石像に変えられてから僅か数分後、美紗緒は学院長に今起きている異常事態を報告していた。
人間を石に変える魔獣と、その危険性、今後の対策など考えられる全てを学院長に告げ、その後の反応を待っていた。
「今警察に連絡しました。警察の手に余る様なら例の組織が……。あれは………。うぶっっ!!」
「いやぁぁぁぁ!!」
 そこまで話した時、ドアの隙間から不気味な管が姿を現し、大量のゼリーの様な物で美紗緒と学院長の身体を包み込んだ。
三十代半ばの若い理事長も二十代後半の美紗緒も、ゼリーの分泌する体液により全身を性感帯に変えられ、子宮の奥深くまでゼリーに犯し尽くされて、硬い石像へと変わり果てた。

 学院長が警察に通報して十五分が経った頃、私立大栗ヶ丘女学院の校門前に数台のパトカーが止まっていた。
六人の若い婦警が手に拳銃を構え、ゆっくりと校庭に侵入し、校庭に立ち並ぶ無数の少女の石像と、校舎の前で蠢く魔獣の姿を確認した。
「状況。M。サイズC〜D。能力、石化・催淫。詳細不明。対特殊生物科学技術研究所に連絡。送れ」
 婦警の一人が状況を冷静に分析し、パトカーに残っていた婦警に連絡を入れ、その婦警が現状を対特殊生物科学技術研究所に報告した。 
「あ…、発砲許可を確認!!いそ……」
 魔獣は校庭に入ってきた婦警達に気付き、頭部から伸びた二本のナメクジの様な目から白い光を放って婦警達を包み込み、瞬く間にそこに婦警を模った石像を作り上げた。

 一時間後、私立大栗ヶ丘女学院の生徒を一人残らず石像に変え、パトカーに残った婦警達も石像に変えた魔獣は校庭に留まっていた。
私立大栗ヶ丘女学院から数分も行けば団地や他の学校があり、魔獣はその気になればそこで好きなだけ精気を吸い上げて石像を作る事も出来た。
しかし、魔獣はあせる事無くゆっくりとその身を休め、少女達から吸い上げた精気で、異世界で受けた傷を完全に癒していた。

「………報告にあったターゲットを肉眼で確認。ターゲットの周りに石化したと思われる少女と婦警を確認。報告に間違いは無い様です」
 連絡を受けた対特殊生物科学技術研究所から、第一級戦闘研究員の山藤伊織とサポート研究員十名が、私立大栗ヶ丘女学院から百メートル程の距離で観察を続けていた。

 対特殊生物科学技術研究所。
これまで、この世界が魔獣の様な生物に襲われたのは、一度や二度ではなかった。
その度に様々な被害を出した政府は、現場に残された異物などを研究し、対策を練る研究所を設立した。それこそが対特殊生物科学技術研究所であった。
 対特殊生物科学技術研究所は研究所という本来の機能の他に、実際に怪獣、魔獣などと戦闘をする部署が存在していた。
伊織はその戦闘部隊の第一級戦闘研究員として活動しており、【先送りの伊織】という不名誉な二つ名まで持っていた。

「山藤さん。どうしますか?直接行きますか?それとも、いつもの?」
 サポート研究員の一人が伊織に近づき、指示を仰いでいたが、返答が帰って来るよりも早く他の研究員は輸送車からある物を取り出し、組み立て始めていた。
「……アレ。言われる前に組み立ててるのはなぜかしら?まあいいわ、いつも通りよ」
 伊織は軽く微笑みながら、戦闘車両の上に三叉の角の様な物が生えた三メートル程の砲門を用意させた。 
サポート研究員は慣れた手つきで砲門を組み上げ、僅か五分程で複雑にコードが絡み合う砲門を完成させた。
「いくわよ!!ごめんなさいね〜。私は面倒なのが嫌いなのよ。悪いんだけど何処かにいって………頂戴!!」
 伊織は魔獣をサイトに捉え、戦闘車両の中から特殊な砲門のトリガーを引いた。
 戦闘車両に取り付けられた砲門から銀色に輝く丸い砲弾が放たれた。
その砲弾は魔獣の数センチ前で弾け散り、瞬く間に輝く光の輪を幾重にも生み出し、まるでブラックホールの様な穴をその中心に生み出した。
「次元転送弾の着弾を確認、全力後退!!」
 魔獣が頭部から伸びた二本のナメクジの様な目から白い光を放つより早く、伊織はその射程から戦闘車両を下がらせた。
やがて魔獣の身体はブラックホールの様な穴に飲み込まれ、現れた時と同じ様に、再び異世界へと送り出された。

「ふふん、任務完了。研究部隊に連絡。残ったサンプルは有効に利用してね」
 魔獣を異世界に送り返した伊織はそれだけ伝えると、乗ってきた車両に乗り込み、対特殊生物科学技術研究所へと引き返した。
この世界に訪れた魔獣による脅威は去り、この世界にウミウシ形の魔獣が訪れる事はもう二度と無かった。


 同時間、違う世界。

 村の外れにある小さな花畑で、あどけなさの残る二人の幼い少女が小さな花を摘んでいた。
「お姉ちゃん。お花、この位で良い?」
「ありがとう、レナ。このかごに入れて。……あれ?なに?」
 少女が見たのは、ほんの数分前にこの世界に飛ばされて来た魔獣だった。
魔獣はレナ達の姿を捉えると、胴体にある赤い巨大な目から赤い光を放ち、その赤い光で幼い少女達の体を包み込んだ。
「うゎぁぁっ、きもち…ぃぃっ」
「こわいよぉぉっ。なにか……きちゃうぅぅぅぅっ!!」
 まだ自らの秘穴に触れた事も無かった少女に、初めて味わう甘い快楽に抗える筈も無く、激しい快楽の津波に心を飲み込まれ、
二人揃って丸みを帯びた柔らかい幼い身体を、硬く冷たい灰色の石へと変えた。

 レナ達を石像に変えた魔獣は、次の狙いをレナ達が住んでいた村に定め、ゆっくりと進み始めた。
小さな花畑に残された淫靡な姿の幼い姉妹の石像が、これから村で繰り広げられる淫劇を予感させていた。


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