タイム・パラドックス 第3話 

作:ビワハヤヒデ


 異変が起こったのは家に戻ってからのことだった。ひたすら楽しんだ僕は家のドアを開ける。するとなにやら足音が
 「おかしいな・・・まだ時間は止まっているはずなのに・・・」
玄関から外を振り返ると、僕によって全裸にされた犬の散歩中のお姉さんが裸とも知らず走るポーズで静止していた。
 「ブーン」同時に車の音がした。止まっていた時間は勝手に動き始める。道を走る車が音を立てて視界から消えていく。全裸のお姉さんは少し走った後気づいて悲鳴を上げていた。
 ところが台所からは声がしない。あそこには母が全裸で立っているはず。2階の妹、風呂場からも声がしない。ただ風呂場のシャワーの音、台所の水道の音がするだけだ。 
 「どうしたんだ???」
僕は思わず走って母の元へ駆け寄った。
 そこにはさっきと同じ格好の母がいた。身動き一つしない。水道からは勢いよく水が流れる。テレビからは朝のニュースが流れる。
ぼくがいくら揺らしても動かない。思い切ってマ○コに指を突っ込んだ。しばらくして液体が飛び出したが母は動かない。
 それから母は二度と動くことはなかったのはいうまでもない。
 不意に上から物音がした。僕は急いで妹の部屋に向かった。まさか妹も・・・。僕は部屋のドアを開けた。
 「グゴォォォォ・・・」
僕は背筋が凍った。そこにいたのは黒いフードをかぶった謎の人間だった。全身フードで覆っていて顔はおろか肌さえ見えない。
黒フードはこちらの存在に気づくとこちらへ向き直った。そして右手から鋭い爪が姿を現した。「タタタタタ・・・」一気にこっちへ向かい走ってくる。まずい、殺される!!!僕はしゃがんで爪を避けた。間一髪。しかし黒フードの右足が上がり、僕の腹を直撃した。
「グフッ」僕は崩れ落ちるように床に倒れた。まずい・・・。黒フードはふっと力を入れ爪を天井に指し示し、一気に僕の方へ振り落とす。
 「ズバッ・・・」僕は鋭い肉を砕く音が耳に聞こえた。しかし爪で差されるような音ではない。僕は思いきって目を上にやった。
 そこには閃光とともに吹き飛び、消滅していく黒フードがあった。
黒フードは跡形もなく消え去った。僕は閃光を放った主の方の顔に目をやった。
 「なんで入れなかったの?姉とヤルのがそんなに怖い?」
それは全裸で両手を突き出す姉の姿があった。両手から出された衝撃波は周りだけでなく自らの小さな胸も揺れた。
 「えっ・・・じゃあ動けたの?」
「アンタ寂しい思いしてたから少しくらい楽しんでもらおうと思ったのに。時間が止まっていたら中に出しても妊娠しないんだよ」
 「いや、そういう問題じゃ・・・」
僕はそう呟いてめちゃめちゃになった妹の部屋を見張った。
 「1年前からこの仕事をしていたの。アンタも目覚めたのね」
「どういう事?」
 姉が真相を語ろうとしたその時、姉ははっと何かに気づいたように下へ駆け下りた。台所に母の姿がない。洋服、エプロン、下着が残されていた。
 「母さん!!!!」
「母さんは奴らの商品になった」
「商品?」
姉は説明を始めた。
 「時間を止められるのはさっきの黒フードの奴ら。時間を止めて女性を裸にしてマークする」
「マーク?」
「そう、マークされた女性は他の時間が動いても動かない。その間に奴らはアジトへ運ぶの。運ばれた被害者はいったん解除される。そこでしばらく飼育され、イイと思ったところで購買者の思い通りのポーズで静止させるの。」
 姉は続けた。「彼女たち白く塗られれば美術館の彫刻に、銅メッキをすれば公園の像になる。蝋をコーティングすればマネキンとして使える。米国に売って兵器実験の実験台や、スタント、時間が静止しているので臓器を取り除いて医療にも使っているのよ」
 「そんなことが許されるの?」
「政府絡みだわ。この前日本女性風俗取締法が制定されたけど、あれにはこのことが記載されていた。公表はされてないけど。
彼らは売り飛ばす仕事をしているけど、他にも違う仕事をする黒フードもいる。芸能事務所はグラビアアイドルなんかで許可をもらったモノは時間を止めて倉庫に保存され、仕事の時に解凍されるんだってさ」
「なんて話だ・・・」 
 僕は自分の知らないところでそんなことが起きていて言葉も出なかった。
「母さんは守れなかったけど・・・」
 その時妹が降りてきて悲鳴を上げた。
「姉ちゃん、何で裸なの?てゆうかあっしも裸だし・・・・」
 

 
 その頃商品化となった母は、狭いホールの中に入れられた。ここで飼育されて、婦人服のマネキンになることが決まっているのであった・・・。

つづく


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