「歩鈴散華・初恋は甘く切なくほろ苦く」

作:アッリア
イラスト:桃色河馬


買い物帰りに、突如キメラアニマの大群に襲われた歩鈴。
「プリングリングインフェルノ!!」
必殺技を放って、キメラアニマを巨大なプリンのような物に
閉じ込める。
「ふーーっ、一丁あがりなのだ」
一息ついた歩鈴の背後から声がする。
「よお、チビ」
歩鈴が声がしたほうを向くと、そこには小さな子供が立っていた。
「タルト!!」
歩鈴は頬をふくらませて言った。
「わるいことするなら、このミュウプリンがゆるさないのだーーっ!!」
歩鈴の背後に、灰色の髪をした痩身の男が音も無く現われる。
そして歩鈴の首筋に手刀を食らわせて、気絶させる。
「一丁あがり♪」
気を失った歩鈴を持ち上げる痩身のエイリアン・・・パイ。
パイの周りを嬉しそうに飛び跳ねるタルト。
「やっぱ一ぴきずつだと弱っちいなー、コイツら」
タルトの足元に何かが当たった。
「なんだ・・・、こいつ?」
足元でうろちょろしていた小猿をつまみあげるタルト。
”う〜き〜っ”
じたばた暴れる杏仁。
気絶している歩鈴見て、にんまりと笑った
「そうか、おまえのペットか。こいつはイイヤ♪」
そして、かき消すようにパイとタルトは姿を消した。


どことも知れない薄暗い洞窟、タルトとパイの二人はいた。
「仲間を人質にとればやつらの手出しは出来ないもんね!」
「・・・わたしは一度船に戻る」
「おっけー、歩鈴はおいらが見張っておくからさ」
「そうだ、タルト。これを使え・・・」
船に戻ろうとしたパイが、タルトに小瓶を投げ渡す。
小瓶を受け取ったタルトはまじまじとその中身を見る。
そこには丸い錠剤が2、3粒入っていた。
「コレは?」
「以前話した、対ミュウミュウ用に開発した酵素だ・・・、
不確定要素は極力排除しないといけないからな・・・」
「りょーかい」


歩鈴はベッドのような台の上に、横向けに寝かされていた。
木の蔓のようなもので手足を縛られ、身動きが取れない状態に
なっていた。
「ふぁー・・・、よく寝たのだぁ」
起き上がろうとして、手足が動かない事にようやく気がつく。
「・・・?何で、縛られているのだぁ?」
かろうじて動く首を動かして辺りを見渡してタルトの姿を見つけた。
「あーっ、タルタル!!」
「だから、その名前で呼ぶなよチビ!!」
タルトが真っ赤な顔で歩鈴に反論する。
「チビじゃないのだ、歩鈴はタルタルよりちょっと大きいのだ」
「くっ〜そ〜、これを見ろっ」
右手で水鉄砲を取り出すタルト。
「みずでっぽうなのだぁ〜、みずあそびなのだぁ〜」
「そんなこと、するか〜っ」
またまた、真っ赤な顔で歩鈴に反論するタルト。
「こうするんだよっ」
小さな檻を歩鈴の前に置いたあったテーブルの上に置く。
檻の中には可愛らしい小猿がいた。
”う〜〜き〜”
「杏仁!!」
驚愕の表情を浮かべる歩鈴。
「杏仁をどうするのだぁ?」
「よ〜く見ておけ、お前もこうなるんだからなっ!」
水鉄砲の先を杏仁に向けて引き金をひくと、茶色い液体が
勢いよく吐き出されて、杏仁に降りかかる。
”うき〜っ、うき〜っ”
檻の中でちょこまかと動いていた小猿の動きが徐々に緩慢に
なっていく。
”うき・、うき・・、うき〜っ・・・”
そしてぴくりとも動かなくなった小猿が、茶色い石の塊と化す。
「いやーっ、杏仁、杏仁、杏仁〜っ」
家族同然の杏仁を石にされ、泣き叫ぶ歩鈴。
「ざま〜みろ!さんざんおいらを馬鹿にした罰だ!!」
「杏仁を元に戻すのだぁ」
タルトをきっと睨みつける瞳からぽろぽろと涙が溢れていた。
「お前もすぐにこうしてやるよ」
歩鈴の泣き顔に一瞬怯んだタルトだが、気を取り直して水鉄砲の
先を身動きの取れない歩鈴に向ける。
「タルタル、やめるのだーっ!!」
「へへへっ、まずは手足からだ♪」
無邪気に笑いながら、引き金をひくタルト。
水鉄砲の先から勢い良く吐き出された茶色い液体が歩鈴の手足を
濡らして行く。
「やっ・・・いやいやいやいやなのだぁーっ」
茶色い液体で濡れた手足から、ゆっくりと感覚が消えていく。
「ひっ・・いやっ・・いやなのだ・・やめるのだぁ!」
「怖がれ、もっと怖がれ〜っ♪」
歩鈴の健やかな手足の先が茶色に染まり、音をたてて硬化してゆく。

「ひっ・・」
「次は背中だ♪」
水鉄砲の銃口を歩鈴の背中に向けて、発射。
歩鈴の背中を茶色い液体が濡らして行く。
「やめる・・の・・だぁ・」
「まだそんな口がきけるんだ♪」
宙に浮かんで、石化しかかっている歩鈴の背中を思いっきり蹴る。
「んんあっ!!」
顔面を蒼白にし、のけぞる歩鈴。
苦悶する歩鈴を愉快そうに見下す。
「そろそろ、楽にしたやるよっ♪」
水鉄砲の銃口を歩鈴の顔に向ける。
恐怖に顔を歪ませる歩鈴。
「やなのだ・・・石になるのは、いやなのだぁ!!」
「ばいばい♪」
勢い良く吹き出した茶色い液体は、歩鈴の顔を、肩を、そして
発達途上の胸を濡らしていく。
歩鈴の全身が茶色く染まっていく。
「いや・・・な・・のだ・・・」
そのまま瞳を閉じて動かなくなる歩鈴。
「・・・」


「あっははははーっ」
完全に石化した歩鈴の前で、タルトは無邪気に笑うが・・・。
手にしていた水鉄砲が地面に落ちる。
タルトの頬を、熱いものが伝う。
「何で・・涙が出るんだ?」
ごしごし自分の目をこすって、動かなくなった歩鈴を見る。
大きな岩に手足を埋もれさせて石化している歩鈴。


「ほんとはオイラ・・・、お前のことキライじゃなかったのかもな・・・」
寂しそうに呟くとタルトはその場から姿を消した。
(おしまい)

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