「みんと逆襲!目覚めしモノ、眠りしモノ」

作:アッリア
イラスト:桃色河馬


いちごとみんとが入院していた病院を襲撃したキメラアニマの大群。
それらは、落着したペトラワイヴァーンの細胞によりキメラアニマ生産プラントに
変貌させられた川崎石油コンビナート施設から生み出されたモノ達であった。
すぐさま、東京ミュウミュウと陸上自衛隊の混成部隊がキメラアニマ生成プラント
殲滅作戦を発動した。ミュウミントとミュウイチゴの活躍により、作戦は当初順調
に進んでいた。次々に浄化されるキメラアニマ生成プラント。しかし・・・。


カフェミュウミュウの地下にある研究施設に、白金稜と赤坂圭一郎の二人がいた.
コンピューターとモニターが、部屋全体を埋め尽くしている部屋で、キメラアニマ生産
プラント攻略戦をモニターしていた。
「稜!!全てのキメラアニマ生産プラントの浄化を確認しました!!」
圭一郎の前にあるモニターには、崩れていくキメラアニマ生産プラントが映し出されて
いた。
「・・・・・・稜?どうしました?」
返事が返ってこないことに不審を抱き、稜のほうを向く圭一郎。
稜はマシャから送られてきた情報を信じられないといった表情で見つめていた。
「これは・・・<ゴルゴーンシステム>!!復活させていたのか!?」
「・・・まさか」
そして、新たに表示された情報を読み上げる。
「・・・4.03秒後にマイクロウェーブ!?」
「えっ・・・!?」
モニターを覗き込み、絶句する圭一郎。
「作戦中止!!逃げるんだ、いちごーーーーー!!」
椅子から立ち上がり、絶叫する稜。


20にも及ぶキメラアニマ生成プラントを破壊し終わったミュウミュウ達の前に
天から1本の光条が降り注ぐ。天と地を貫く、緑色の光。
ミュウミントとミュウイチゴの身体が、その輝きに照らし出された。
「空が・・・・・・・・・」
「なんですの!?」
呆然と立ちすくむ二人の前に、稜からの通信が入る。
”作戦中止!!逃げるんだ、いちごーーーーー!!”
その叫びを聞いたミュウミントは迷わずミュウイチゴを抱きかかえて飛び上がると、
全速力でその場を離れる。
「しっかり、つかまっているのですわよ、いちご!!」
「うん・・・・・」
(・・・あれ?みんとの身体こんなに固かったっけ・・・?)
彼女達の背後で、空を覆っていた黒い雲を貫いて、天と地を結ぶ巨大な光の柱が出現した。
ミュウイチゴの必殺技リボンストロベリーサプライズにより消滅したはずの
キメラアニマ生産プラントが急速に再生を繰り返し、見る間に復元されていく。
そして・・・。
<ゴルゴーンシステム>が発動した。


興奮気味の若い女性レポーターが、マイクを握り締めテレビカメラに向かって喋っている。
彼女の後方では、黒々とした煙があがっていた。
「本日、川崎石油コンビナートで起きました謎の爆発による火災のため、ここお台場を
中心にいまだ立入禁止が続いています。
東京都知事は非常事態宣言を発令し、自衛隊に災害派遣を要請しました。」
ヘリコプターからの映像と思われる上空からの映像に画面が切り替わる。
もうもうと立ち込める煙のため、火災現場がまったく見えない。
「現在、消防機関による懸命な消火活動が行われていますが、有毒ガスが発生している
ため作業は難航している模様です。・・ああ!?」
そこでカメラマンが転倒したのか、地面が斜めに映った。
悲鳴のような女性レポーターの声が響き、カメラマンに向かって何事が叫んでいた。
再び、女性レポーターが画面に映し出される。
上半身しか映っていない彼女は、青ざめた顔で自分の足元を凝視していた。

「きゃっ!?」
小さく悲鳴をあげる女性レポーター。
足元を見ると、何か青白く光るものが蠢いている。それはじわじわと、両足を巻きつく
ように這い上がってくる。
その場から逃げようとしたが、地面に張り付いたように足はピクリとも動かない。
助けを求めようとあたりを見回すが、自分以外に動くものは何一つない。
最も近くにいたカメラマンは転倒した後、カメラをこちらに向けてからはぴくりとも
動かない。
カメラに、映像が放送されていることを示すタリーランプが点灯していることを
確認した彼女は、努めて冷静に実況を続けることにした。
「・・・あり得ないことが私の目の前で起きています!」
(・・・そんな実況中に・・・なんてこと・・・)
実況しつつ、身体を這う悪寒に耐えるのは、かなり緊張感があった。
身体を這う青白い光は、両足にまとわりつきながら上り、お尻にはピッチリと張り付いた
タイトスカートを通ると、飾り気の無い薄桃色のシャツに到達する。
青白い光が通った後のパンプス、ストッキング、タイトスカート、シャツがその色を失い、
灰色に染まっていく。
「クゥウッ!こ、こんなことが有り得るのでしょうか?わ、わたくしのか、からだが・・きゃふぅ!?」
仰け反って喘いだ。仰け反った拍子に、シャツの下で小振りな胸が弾む。
思考をも中断させるような快感が彼女を襲い、身体がかすかに痙攣する。徐々に吐息が荒くなる。
左腕が動かなくなる。シャツを這い上がった青白い光は、小振りな胸を通って、彼女の胸元に到達した。
「・・・あ、青い光が徐々にわたくしの顔に近づいて・・ヒィイッ!」
女性レポーターの表情が強張る。実況を続けようと無意識にマイクを持った右手を高く掲げる。
「ンンッ!ああっ、あ、限界ですッ!スタジオにお返し・・・」
(アンッ!気持ち・・・いいっ!アア〜ッ!)
青白い光が彼女の顔を駆け上がる。その頬は、紅く火照っていた。
「クゥゥッ!」
ついに堪え切れなくなった喘ぎ声が口から漏れ出す。
「アア、アァ、アアァ〜ッ・・・・」
が、その声もすぐに途切れた。
右手に持ったマイクを高々と掲げたまま動きを止めた彼女の姿を最後に映像はプツンと切れた。


「なんて・・ことですの・・・」
辛うじて<ゴルゴーンシステム>の効果範囲から逃れることの出来たミュウイチゴと
ミュウミントの二人は、眼下に広がる惨状を、呆然と眺めていた。
動くものは何もない死の世界だった。人も、犬も、猫も、烏も、樹も、自動車やビルさえも
完全に石と化した、一面灰色の世界だった。
「・・・全滅・・ですの?」
(ゼン・・メツ?)
「そ・・・・んな、こんなことって・・・」
両手を口に当て、目に涙を浮かべるミュウイチゴ。
(人間も動物もみんな・・・みんな石になっちゃった・・・・どうすればいいの青山くん)
(あたしたち・・・・どうしたらいいの・・・・?)


<ゴルゴーンシステム>の発動により変わり果てた地上の映像は、エイリアン達の前にも
映し出されていた。
「クックックッ・・・、我らの勝利は決定的だな・・・」
祝杯をあげ、勝利の余韻に浸っていたガトー・デュ・ロワに、突如甲高い警告音が鳴り響く。
「何事だ?」
パイがコンソールに近寄り、計器に映し出された情報を素早く読み取る。
「<ゴルゴーンシステム>制御回路がオーバーロードした様だな・・・。」
「ふむ、なにしろ4000年振りの起動だ。多少の不具合は致し方なしか・・・」
「・・・キメラアニマどもには手に余ろう。私が調整しに行こう。」
「頼む。」
パイが飲みかけのワイングラスを置いて船外へと出る。
ガトー・デュ・ロワが背後に控えていた白いキメラアニマ・ハーピィを招き寄せる。
「・・・<ゴルゴーンシステム>の調整が済み次第、手はず通り、彼奴を始末しろ。」
彼女は略式の礼をすると、配下を数人引き連れて、パイの後を追う。
(彼奴がいなくなれば、後は猫娘に狂っている直情バカだけ・・・
どうとにでもなるわ・・・)
「ハーッハッハッハッハッハッハッ!!!」
るガトー・デュ・ロワは、グラスを高々と掲げると、艦内に高笑いを響かせた。


「ゴルゴーンシステム」。
それはエイリアンが開発した対人類用戦略兵器で、効果範囲内の生物はいかなる
防御手段を用いても、元素変換即ち、炭素をケイ素に置換させる兵器である。
ただ、このシステムの兵器運用には決定的な問題があった。
それはシステムの発動に膨大なエネルギーが必要だったのだ。


「で、エイリアン達はそのエネルギーをどこから調達しましたの?」
藍沢みんとが、<ゴルゴーンシステム>について一通り説明をおえた圭一郎に対して
腕組みをしながら詰問する。もう一人のミュウミュウである桃宮いちごは、
リボンストロベリーサプライズの連続使用による疲労困憊とショックのため、
別室で休んでいる。
「これをご覧ください・・・」
そう言って圭一郎は空に浮く鯨の写真をプロジェクターで映し出した。
「これは、航空自衛隊所属のRF−4E偵察機が今朝撮影したものです。」
「なんですの?これは・・・」
「エイリアン達が<ゴルゴーンシステム>及びキメラアニマ生産プラントへのエネルギー供給のために生み出されたキメラアニマと思われます。」
「これらのエネルギープラントは、高度4万2000km、傾斜角±1度、周期約24時間、
東経140度の静止衛星軌道上に、約20程存在します。」
「打つ手はありますの?」
両手を挙げて首を左右に振る赤坂。
「自衛隊によるミサイル攻撃が先程行われたが、効かなかったようだぜ。」
白金が書類に目を通しながら答える。
新たな図がプロジェクターに映し出される。赤い点を中心に、すり鉢上に配置された無数の青い点。
どうやら敵の配置図の様だ。
「赤い点がエネルギープラントで、青い点が護衛部隊のキメラアニマです。
ご覧の通り、エネルギープラントを中心に十重二十重に囲んでいます。」
青い点がまばらにしか存在しない赤い点の上方を指差して、みんとが圭一郎に尋ねる。
「どうして、そこにキメラアニマがいないのですの?」
「キメラアニマが活動できる限界高度と思われます。ですが、我が方にもその高度に到達できる航空機が
ありません」
赤坂の説明を聞いたみんとは携帯を取り出すと、どこかへ電話をし始めた。
「下地島空港に例のモノ−−−わたくしの10歳の誕生日プレゼントを大至急、運んでくださいな。
ええ、いつでも出せるようにしておいてくださいませ」
電話を終えたみんとが、真剣な表情で白金へ歩み寄る。
「白金・・・<アグネア>の使用許可を・・・。」
「みんとさん!?」
驚いた表情を浮かべる赤坂。対して白金は眉一つ動かさずに返答する。
「構わないぜ・・・ただし、一発しかないから外すなよ・・・・」
「ええ。策は我にあり・・・ですわ」


キメラアニマプラントの上空で警戒にあたっていたキメラアニマ・ハーピィの一群が
大気圏より降下してくるグリーンの機体を発見した。
彼女等に、ガトー・デュ・ロワが下した命令は簡潔そのものだった。

”侵入機は撃墜せよ”

命令に従い、彼女達はシャトルに向って風の刃を放つ。
キメラアニマ・ハーピィの集中攻撃を受けたシャトルは煙を上げ始めた。
「キュエキュェ!?」
シャトルの最も近くにいたキメラアニマ・ハーピィが声をあげる。
妙に派手な黒煙を上げるシャトルの胴体部分に、何か青い物が見えたのである。
煙が晴れた一瞬、水色のコスチュームに身を包んだ少女が弓をこちらに向けるのがはっきりと見えた。
「キィキィィーーーーーーー!」
仲間に警戒を促すけたたましい鳴き声をあげた瞬間、ミュウミントから放たれた
ミントーンエコーがキメラアニマ・ハーピィを貫いた。


高度4万2000kmに浮かぶ鋭角的なシルエットが特徴的なフォルムの艦内にいる
ガトー・デュ・ロワは上機嫌であった。先ほど邪魔者のパイを始末したと報告があったからだ。
不敵な自信に満ち溢れた薄笑いを浮かべるガトー・デュ・ロワ。
「来ましたね、青い奴。」
絶対の自信を持った切り札を、彼は持っていた。
「さあ、私の美しき精鋭”スノーゴッデス”よ。私に勝利の美酒を捧げるのです!!」
彼の座乗艦から、雪のように白い羽根を持った乙女達が次々に出撃する。
彼女達は対ミュウミント用に、攻撃力、旋回能力を高めて格闘戦に特化したキメラアニマ・ハーピィであった。
その数、24体。
ガトー・デュ・ロワは勝利を確信していた。

10分後・・・。
ミュウミントに向かったキメラアニマ24体全ての生体反応が消失した。
「ば、馬鹿な!?」
報告を受けたガトー・デュ・ロワは、滑稽なまでにうろたえ席から腰を浮かす。
グラスが床に落ち、中身のワインを盛大に床にぶちまける。
「迎撃は、迎撃部隊はどうした!落とすんだ!!何をしている!!!」
罵るように叫ぶガトー・デュ・ロワの姿は、貴族という存在からは遠くかけ離れていた。


ミュウミントは肩に生えた翼をすぼめて急下降に入った。
そして、一息で巨鯨の群れを一望出来る位置に到達した。
眼下に浮かぶ巨鯨の群れ。それは昨日キメラアニマ生成プラントを回復させたエネルギープラントだ。
「お姉さまの仇、取らせてもらいますわ!!」
両手を高々と天に掲げるミュウミント。
「アグネア!!」
彼女の声に応えるかのように、眩い光を伴って彼女の手に古めかしい弓が現れた。
その古弓を構えるミュウミント。彼女のいつも使っているミントーンアローに
よく似たそれはモヘンジョ・ダロ遺跡より発掘されたものであった。
巨鯨の群れの中心を探すミュウミント。鋭角的なシルエットが特徴的なフォルムの艦がそこにあった。彼女は知らなかったが、それはガトー・デュ・ロワの乗船する宇宙船であった。
生体プラント直援のキメラアニマ・ハーピィ、顔と胸までが人間の女性で、あとは巨大な鳥の姿をしたキメラアニマが群れをなし、奇声を発しながら迎撃に向かう。だが・・・。
「いきますわよ!リボーンミントーエコー!!」
放たれた光の矢は、直線上に立ちはだかったキメラアニマ・ハーピィをことごとく貫き、
そして消滅させながら、エネルギープラント中心部目掛けて突き進む。
4000年以上に渡って眠り続けていた力が、今、解放されたのだ。

閃光。
めくるめく光芒の渦。
その光を浴びたキメラアニマ・ハーピィがその動きを止める。
<アグネア>の光に晒されて、羽毛に覆われた身体が透き通り、命の無い塩の塊に変わっていく。
羽ばたかなくなった彼女達は次々に地上を目指して落ちていった。
その光は、空に浮かぶ巨鯨をもことごとくを飲み込み、さらに膨れ上がっていく。
頭上から降り注ぐ閃光を凝視しながら、ガトー・デュ・ロワはうめいた。
「これが、アグネアか・・・」
と。そして彼は、光の奔流に飲みこまれ、乗艦と運命を共にした。

その光は、なおも広がっていく。
旧約聖書にあるソドムとゴモラの滅亡を見たロトの妻のように、塩の柱と化すキメラアニマ・ハーピィ達。
そして、この恐るべき惨劇を引き起こした張本人であるミュウミントにも光は襲い掛かった。

ミュウミントは<アグネア>を放った場所から一歩も動かず、その場に留まっていた。
いや、違う。
もはや彼女には、逃げるだけの力がなかったのだ。
彼女を蝕んでいたペトラワイヴァーンの毒が、とうとう彼女の全身を内側から
硬く冷たい石に変質させていたのだった。
「・・・ざくろお姉さま、お傍に・・今、お傍にまいりますわ。」
瞳を閉じ、安らかな表情を浮かべるミュウミント。
自らが引き起こした光の奔流に呑み込まれる寸前、ミュウミントの身体はどこからともなく
飛んできた鞭に絡め取られた。
そしてミュウミントの身体は、どこへともわからぬ場所に投げ出されていった。


東京湾上空で、エネルギープラントが壊滅してから1時間後の京浜地区。

ミュウイチゴは、陸上自衛隊の火力支援を受けなんとかキメラアニマ生体プラント中枢に到達していた.
「こいつの核はどこにゃんっ!どこにあるにゃん!マシャ!!」
ミュウイチゴはマシャにキメラアニマ生体プラントの中枢部をスキャンさせる。
ぴーーっ、ぴーーっ、ぴーーっ、ぴーーっ。
けたたましい機械音を発しながら、マシャの尻尾がある一角を指し示す。
「あそこねっ、ありがとマシャ!・・・ストロベルベル!!」
ミュウイチゴは右手の甲にあるハート型のアクセサリーの上に取り出したストロベルベルを重ね合わせる。
ストロベルベルから噴出したエネルギーがミュウイチゴの髪の毛を逆立せる。
空高くジャンプし、月を背にストロベルベルを構えるミュウイチゴ。
空中で回転する彼女の頭上に七色に輝くエネルギーが集まっていく。
そして・・・。
「リボンストロベリーサプライズ!!!」
ストロベルベルからハート型の光が放たれる。その光は広がりながら、七色の丸いエネルギー波となり、
キメラアニマ生体プラントの中枢部−−−<ゴルゴーンシステム>を直撃する。
「消えて無くなるにゃんんんんっ!!」
ミュウイチゴの叫びとともに、<ゴルゴーンシステム>は無数の光の粒子になって跡形もなく消え去った。


ミュウミントは、どことも知れない薄暗い場所にいた。

「あ・・・ざくろお姉さま・」
仰向けに倒れたまま、愛しい人の名前を嬉しそうに呼ぶミュウミント。
身を包んでいるタイトなバトルコスチュームの、ミントブルーの色が失われて行く。
彼女の控えめな胸が、元の色を、柔らかさを失い、茶色に染まっていく。

「あれ?・・・お姉さまを抱きしめたいのに、手が動きませんわ・・・」
ふくらんだ半袖から下の腕が、胸と同様に手袋ごと、茶色に染まって硬くなっていた・・・。
腕を動かそうとミュウミントは力を入れるが、肩がぴくりと動いただけであった。
そのむき出しの白い肩も、青い羽根とともに、徐々に茶色く染まっていく。

「あ・・れ?なにも見え・ませ・・・ん・わ・」
大きく見開いたミュウミントの瞳は、何も映してはいない。
いや、映せないのだ。
彼女の瞳はすでに茶色に染まっていた。

「・な・に・・・・も聞こ・・え・・ませ・・ん・わ・・」
青い髪がお団子のてっぺんから、茶色が浸透し染まっていく。
彼女自慢のサラサラの髪が、つやを失って、硬質な感じに変わって行く。

「お・・ねえ・・・さま・・どこに・い・・・ますの・・・?」
口の動きが徐々に緩慢になっていく・・・。
ミュウミントの声が、途切れ途切れになっていく・・・。

「お・・・ね・・・え・・さ・ま」
声が小さくなっていく・・・。

「お・・・ね・・・」
ミュウミントの唇から紡がれていた声が、途切れた。
彼女の唇が、すっと通った鼻筋が、つり目の瞳が、茶色に染め上げられた。

薄れいく意識の中で、ミュウミントは誰かの声を聞いた。
彼女の耳は完全に聞こえなくなっていたが、その声は確かにみんとの名前を呼んでいた。
単なる幻聴かもしれなかったが、その声は心地良く彼女の意識に届いた。
それが、最後の記憶。
そして・・・・。
彼女は意識を手放したのだった・・・。


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