『開けてはいけない扉』

作:アッリア


『開けてはいけない扉』
   演者:みゅうみゅう幼稚園のみんな

むかし、東京の小さな町に一人の青年が住んでいました。その青年はとてもお金持ち。
顔も性格も良く、剣の達人でしたが、町の人たちからは恐れられていました。
「アオヤマくんは、お嫁さんを殺すそうよ。」
いつの頃からか、町にそんなうわさが流れていました。
というのも、今までアオヤマくんと結婚した女の人は、みんな行方不明になっていたからです。
「ただの噂ですよ。」
アオヤマくんは噂を笑い飛ばしながら、また新しい奥さんを探しています。
そして、知り合いの家の娘であるイチゴちゃんに目をつけ、自分の屋敷に招きました。
「気を許すんじゃねーぞ、イチゴ!」
イチゴちゃんのお兄さんであるシロガネくんは、きつくいって聞かせました。
「でも、みんながいうほど悪い人じゃないにゃん。」
世間知らずのイチゴちゃんは、ひと目でアオヤマくんのことが好きになってしまいました。
そして、とうとう結婚することになったのです。

ある日のこと。
アオヤマくんは、イチゴちゃんをのこして一週間ほどイギリスにでかけることになりました。
「それじゃあ行ってくるよ、イチゴ。友達でも招待して楽しくすごすといいよ。」
やさしく微笑みながら、アオヤマくんはイチゴちゃんに家の鍵を渡します。
「僕が留守の間、どの部屋でも自由に見てもいいよ。でも、地下室だけは決して開けちゃ駄目だよ。
いいね、決して開けちゃ駄目だよ。」
アオヤマくんはイチゴちゃんに何度も注意したあと、イギリスに旅立っていきました。
「一人でお留守番するのは寂しいにゃん。」
そう思ったイチゴちゃんは、さっそく友達のもえちゃんとみわちゃんに招待状をだしました。
しかし、いつまでたっても来る気配がないのでイチゴちゃんは次第に退屈になってきました。
その時です。
「いいね、決して開けちゃ駄目だよ。」
アオヤマくんの言葉が頭に浮かびました。
「いったい何があるにゃん。」
イチゴちゃんはきゅうに確かめてみたくなり、地下への階段をおりていきました。
そして、そっと鍵の掛かった扉を開けたのです。
「だまっていればわからないにゃん。」
うす暗い部屋に足を踏み入れたイチゴちゃんは、声もでないほどに驚きました。
何人もの女の人が大きな石版に塗り込められていたのです。

肌が茶色く変色した女の人達は、皆一様に苦悶の表情を浮かべていました。
「こ、これは行方不明になったアオヤマくんのお嫁さん達に違いないにゃん。」
イチゴちゃんは怖くなって、あわてて部屋に戻りました。
するとどうでしょう。
イギリスに行ったはずのアオヤマくんが無表情でこちらを睨み付けているのです。
「見たね・・・。」
アオヤマくんは、むりやりイチゴちゃんの首根っこを掴んで地下室に引きずっていきました。
「お願いにゃん。だれにもいわないから許してにゃん。」
イチゴちゃんは一生懸命に謝りましたが、アオヤマくんは無表情のままです。
「僕はイギリスに行くと言って、君を試したんだ。君もここにいる彼女達と同じように、
僕の言いつけを守れなかったね。」
アオヤマくんは凄絶な笑みを浮かべて、イチゴちゃんの髪の毛を左手で掴みます。
「ああ、お兄さんたち。早く来て!」
イチゴちゃんは一心に手をあわせました。
その時です。
「待てーっ!」
叫び声を上げながら、娘のお兄さんであるシロガネくんと愉快な仲間達が駆け込んで来ました。
「僕の大切な妹(イチゴ)になにをするつもりだ!」
「彗星藍玉斬!!(×4)」
お兄さんと愉快な仲間達は勇ましく戦いましたが、アオヤマくんに返り討ちにあってしまいました。
アオヤマくんは日本で一番の剣の使い手だったのです。
「そんにゃ・・・」
「待たせたね、イチゴ。」
アオヤマくんは懐から取り出した小瓶の中身を口に含むと、そのままイチゴちゃんの唇を塞いで
口移しに飲ませました。
何が起きたのか理解できずに茫然としているイチゴちゃんを床に押し倒すと、馬乗りになって
イチゴちゃんの首をぐいぐいと締め上げます。
「苦しむんだ、イチゴ!!」
「いや、いたい!!」
大きく目を見開き、両足をばたばたと暴れさせてイチゴちゃんがうめきます。
「やめて、アオヤマくん。アオヤマきゅん!!」
イチゴちゃんの身体のあちこちに茶色い斑点が浮かびあがると、それまでと違う叫びが上がります。
「ふにゃっ!にゃあああっ、やっ!!んんっ・・・」
アオヤマくんに口移しに飲まされた薬が全身に回って、イチゴちゃんの身体を石へと変えているのです。
それはイチゴちゃんの全身に激しい痛みを与えまました。
イチゴちゃんの桜色の唇の端から白い泡がこぼれ落ちます。
両足で激しく床を蹴りつけ、身体をくねらせて暴れます。
「愛してるよ、イチゴ。」
激しく身体をくねらせていたイチゴちゃんでしたが、アオヤマくんが力を込めると
びくっびくっと数度身体を痙攣させた後、白目を剥いて動かなくなりました。
アオヤマくんがいとおしそうにイチゴちゃんの頬を撫でて、まぶたを閉じてあげると
イチゴちゃんの全身は茶色に染まり、冷たい石に変わってしまいました。
「もう僕の言いつけを破っちゃ駄目だよ。」
アオヤマくんはイチゴちゃんの首に鈴をつけてあげました。
「イチゴは僕のネコなんだから・・・」

その後、アオヤマくんはもの静かなたくさんのお嫁さん達に囲まれて幸せに暮らしたということです。
めでたし。めでたし。

おしまい


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