作:アッリア
未来世紀0064(ダブルオーシックスフォー)
熊をモチーフにしたモビルスーツ―――ダンクンガンダムが試合開始と同時に一気に間合いを詰め
足の甲が背中に向くほど高々と振り上げた踵を、ゴッドガンダムに、落とした。
ティミョ・ネリョ・チャギ(飛び踵落とし)
だが。
「遅いっっっっっ!!!」
ドモンの怒号とともに、僅かに後ろに下がってそれをかわしたゴッドガンダムの右拳に力が込められていく。
腕のアームカバー、Gナックルがマニピュレーターをガードする。
胸部中央のエネルギーマルチプライヤーが開き、キングオブハートの紋章が浮かび上がる。
背部の翼状のフィールド発生装置が展開し、高熱を発生し始める。
拳が赤熱し、輝く!!!
「俺のこの手が真っ赤に燃えるぅ、勝利を掴めと轟ぉぉどろきぃ叫ぶ!!!」
身構えた五本の指に凄まじいエネルギーが集結していった。
「爆ぁぁぁぁぁぁぁくねぇっぅ、ゴォォォォッドォフィンガァァァァァァァァァァ!!!!!」
光輝く五本の鋼鉄の指は、ダンクンガンダムの胸の分厚い装甲を突き破る。
「ヒィーーーートォォォォォォ、エンドォーーーーーッ!!!」
目も眩む爆発とともに、鋼鉄の巨体は重々しく傾き、炎に包まれた。
「圧倒的ですっ!!!さすが前13回ガンダムファイト優勝者ドモン・カッシュ!!
ネオコリアのダンクンガンダムに対し、開始僅か47秒にて勝利いたしましたああああっ!!!!」
ネオジャパン代表ドモン・カッシュ選手の勝利を、アナウンサーが高らかに宣言する。
ネオジャパンを舞台に第14回ガンダムファイトが開催されているちょうどその頃、
荒廃したホンコンの街に、世界各国から来たマスメディアが殺到していた。
4年前、ネオジャパンコロニーを呑み込んだデビルガンダムなる超巨大兵器の暴走事件の際に
その尖兵として跳梁跋扈していた15m程の鎧兜姿のサイクロプス――デスアーミーが現われたというのだ。
とあるTV局のスタジオ。
「3、2、1、キュー」
テーマ音楽とともに、4台のカメラが女性キャスターの上半身へぐいっと寄っていく。
「みなさん、今晩は。ここで通常の番組に代わって、報道特別番組をお送りいたします」
「それでは、ランタオ島の松井ナオコさんを呼んでみましょう。ランタオ島の松井さん?」
スタジオのメインキャスターが呼ぶ。
「中継現場、松井さん?どうしました、松井さん?」
しかし、その呼び掛けに答える者は誰もいなかった。
・・・遡ること数分前。
衛星アンテナをホンコンの空に向けた大型TV中継車の前を、技術スタッフ達が
中継の準備ため撮影機材を手に慌しく走り回っていた。
突然、彼らの足元がぐらり、と揺れる。
「きゃっ!?」
中継のためメイクを直していたレポーターの松井ナオコ(22)は悲鳴をあげてその場に倒れた。
しばらくして、揺れは、おさまった。
「大丈夫か?」
心配そうに髭のディレクターが倒れたナオコに声を掛けた。
ミニスカート姿であることを思い出し、慌てて立ち上がるナオコ。
「最近多いですね、地震・・・」
「あの噂、本当かもな・・・」
最近、ホンコンではある奇妙な噂が囁かれていた。
・・・ランタオ島の地下奥深くには、旧ホンコン政庁舎の地下研究施設に残されていたDG細胞が、
自己増殖、自己再生、自己進化を繰り返し、自分の手足となるデスアーミーやゾンビ兵をも
生み出せるまでに再生を果たしたデビルガンダム・・・デビルガンダムJrが眠っている・・・
「もう、脅かさないでくださいよ〜」
顔を少し青ざめさせたナオコは、怒ったような口調でディレクターに抗議した。
「悪い、悪い、もうすぐ中継だ。よろしく頼むよ」
後ろで手を振ってディレクターはその場を離れようとした。
グシャ!!
ディレクターの身体は、彼の頭上から振り下ろされた金属の塊に押し潰された。
ナオコの目の前に鎧兜姿のサイクロプス―――デスアーミーがいた。
彼女らを包囲するように出現したデスアーミーは、カメラマンや技術スタッフ達を
手にした棍棒型ライフルで、その脚で、次々に押し潰していく。
ナオコは声も出せないまま、その惨劇を見ていた。
自分が恐怖のため失禁したことにも気づかぬまま・・・。
パンティが濡れ、内股を生暖かい液体がつたっていく。
彼女の目の前で、一体のデスアーミーがその胸部を開いた。
コクピットの中には無数の緑色の触手が蠢いていた。その内の数本の触手が彼女に向けて鎌首をもたげた。
「・・・ひっ・・・」
その場から逃げようとしたまゆみの手足にコクピットから伸びた触手が素早く絡みつく。
彼女の右腕に絡みついた触手は、その腕を伝ってスーツの襟元から、中に潜り込んだ。
「や、やめてっ・・・」
服の中で蠢く触手の数が増え、その動きに耐え切れなくなった彼女のお気に入りのスーツの上着が
ブラジャーとともに破裂するように千切れる。ナオコの形のよい白い乳房がプルンと踊った。
それとほぼ同時に足首に絡みついた触手の一本が、ふくらはぎ、太股を伝って
ミニスカートの中に潜り込み、スカートをまくりあげながら、ナオコの引き締まった尻を撫でまわした。
「ひぃぃぃぃいぃいぃぃぃっ!!」
触手のおぞましい感触に悲鳴をあげるナオコ。
殺到した触手に耐え切れずスカートのホックとジッパーが弾け飛ぶ。
「嫌っ、いやっ!誰か、誰か助けてぇ!!」
ナオコの悲痛な叫びに答えるものは、誰も・・・誰もいなかった。
絶望的な状況に涙するナオコ。
そんな彼女の身体に異変が起こった。
彼女の爪先が銀色に輝き始めたのだ。
足首、ふくらはぎ、ふとももと、銀色の箇所が増えていく。
形の良い尻を、細く引き締まったウェストを、白い乳房を、銀一色に染め上げていく。
「・・・誰か・・・たす・・・」
冷たく硬くなっていく身体の感覚を感じながら、彼女が最後に見たものは銀色に輝く異様な
外見をしたガンダムの姿であった。
ランタオ島の地下奥深くに彼女は眠っている。
銀色に輝くボディに包まれた彼女は、新たな進化を模索していた。
地球に到達する寸前に消滅した親機の情報をも彼女は取り込み、同じ過ちを繰り返さないよう
慎重の上に慎重に行動し、遂に念願の生体ユニットを入手したのだった。
女の身体が、彼女の体の中央付近に埋没していた。その手足は無数の触手で覆われていた。
覆われていないのは、顔と、美しい曲線を描く乳房、可愛らしいおへそだけとなっていた。
銀一色のその姿は、旧時代の帆船の先端に飾られた女神像のようにも見える。
思念が地中に響いた。
「マダヨ・・・マダ・・・タリナイ・・・」
それは無機質な、それでいて優しい温かみを感じる声音をしていた。
「・・・モット・・・モット・・・」
地球を再び自然の溢れる地に戻すために、彼女は消去されるわけにはいかないのだ。
「・ホ・シ・イ・・・・」