悪気は無いの 紫堂さんより


幼馴染は、まだ年端もいかない女の子が後ろ手に手枷を掛けられ、身体を柱に縛り付けられているのを見つけました。
不安そうな眼差しで、こちらを伺っています。
面影が何処か自分の妹に似ていて、妙な気分になります。
「…捕虜になった兵士…には見えないんだけど」
「所謂人質っちゅー奴だ。…この年頃のガキは、脱がせると後で煩いんだよなー…全く」
「…何考えてんのよ。…で、この子も固めるの?」
「おう。朝から作業でそろそろハラ減ったからさっさと終わらせる」
宮廷魔道士はやる気無さそうに呟き、少女の拘束を解いてやりました。
「一応どんなカッコにするか、希望は聞いてやるよ」
「…あ、…」
女の子は少し怯えた様な表情を見せ…やがて、ぺたりと床に跪き、指を組み合わせました。
魔道士は女の子に手を翳し、呪文を唱え始め…
「ちょっとまったぁ!」
幼馴染のダメ出しが入りました。
「それ石化の呪文じゃないのよ!なんてことすんの、こんな小さな子に!」
「はぁ!?」
「石化は細胞そのものが変質しちゃうのよっ!後で解いても成長に影響が出ちゃうかもしれないわっ!」
「氷結にすると部屋が寒くなる(ってさっき調子に乗ってニ、三体凍らせてから解った)んだよっ!なんで自分の家の中で白い息吐かなきゃいけねーんだっ!」
「あんたが霜焼けになろーとアカギレになろうと知ったこっちゃ無いけどっ、この子は…」
「…おねえちゃん、おにいちゃん、マリエ、どっちでもいいな…」
「「子供は黙ってなさいっ!!」」

数分後。
部屋の中には、半身を石化、半身を氷に封じられた女の子の姿がありました。
跪いて祈りを捧げる様な格好の少女でしたが、その表情には何処か怒りに近いものが感じられたのでした。


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